今日の一曲 No.28:風「あいつ」

「今日の一曲」の第28回目、このジャンルの音楽をご紹介するは初めてだ。

 

あまり音楽を分類するのは好まないのだが、幾らかでも分かりやすく伝えるには・・・、

「70年代フォーク」と呼ぶことになるかと・・・、その一曲だ。

 「風」のファースト・アルバムに収録された「あいつ」という曲をご紹介しつつ、当時のエピソードを語らしていただく。

 

前回の第27回目に紹介した「バニー・マニロウ」や、以前に第何回目だったか?イギリスのロック・グループ、クイーンの曲を紹介させていただいたが、ほぼ同時期に聴いていた音楽だ。

中学生の頃のことだ。

もっぱらクラシック音楽を聴くのが中心だったが、徐々に歌謡曲、ロック、ポップス、ジャズ・・・なんでも興味あって聴くようになった。

 

平成生まれの方がこのブログを読まれることも増えつつあるので、「風」というユニットについて、ここで極簡単に解説。

「南こうせつとかぐや姫(後に「かぐや姫」)」という男性3人のフォーク・ユニットの一人「伊勢正三」と「猫」というユニットの中の一人「大久保一久」が組んだフォーク・デュオ・ユニットが「風」。

 

「南こうせつとかぐや姫」が「神田川」という曲で、「ガロ」というユニットが「学生街の喫茶店」という曲で、巷ではヒットを飛ばしていた。中学生である同級生の中には刺激されてギターを始める者もいた。が、これらの音楽を耳にしてはいたものの、自身はそこまでの強い興味を抱くほどではなかった。

が、少し経って、「かぐや姫」ファンになっていた友人が持っていたLPレコード盤を聴かせてもらった。その中に、伊勢正三をメイン・ヴォーカルに据えた「22歳の別れ」という曲があった。これには少々ハマったのだった。

イントロのあのギターの符点音符リズムのアルペジオ(分散和音)とリード・ギターの絡み合う音色と響きにハマった。

そこに、伊勢正三のどことなく頼りげなく甘い歌声が加わってくる感じが心地好かった。

同じようなハマり方をした人は多くいると思う。

 

で、この曲は、「かぐや姫」としてでなく、確か?「風」としてシングル・カットされて大ヒットする。この「22歳の別れ」を聴いている人はある年齢層の方なら多くいらっしゃることだろう。

 

それで、まもなく後に結成した「風」のファースト・アルバムであるこのLPレコード盤を貯めたおこづかいを注ぎこみ、地元の小さな(失礼か?)レコード店で買ったのだった(上の写真)。

 このアルバムには、これより更に数年後、「イルカ」が歌ってヒットした「海岸通」も収録されている。他、「東京1975」も収録されている。

 

でもやはり、B面の1曲目にある「あいつ」だ。

「22歳の別れ」とよく似たアコースティック・ギターのアレンジが心地好くも、哀しすぎて、寂しすぎる歌詞の世界観を、拡げて、深くいなざってくれているように感じる。

・・・と、これは現在聴くとそう感じる。当時の浅はかな中学生(私のことだよ)は、ただ、ギターの響きとそのアレンジに惚れ込んだだけだったと思う(汗)。

 

クラシック音楽を中心に音楽を聴いていたから、おそらく歌詞に耳が向く習慣がなかったのかも知れない。

自己弁護でもないが・・・(笑)。

 

それでも、浅はかな中学生も、この「風」のファースト・アルバムであるLPレコード盤を手にしてから、「フォーク」というジャンルの音楽にも聴き入ることになって、少しずつ歌詞のある世界観、その奥深さを感じられるようになっていったように、振り返ると感じる。

 

人の感情がそれほど単純なものではないことや、世の中や社会という場がそれほど甘くもなく、簡単に生きられるようなところではないかも知れないこと・・・そんなことを感じたり、自身がどう生きていこうとしているのかを認知したりする土台を創り上げていく一コマになったのだと思う。

 

しかも、「あいつ」って、フォークならではのタイトルかと・・・。

 魅力あるアコースティック・ギターのアレンジを切っ掛けに、薄っすらと歌詞の世界観を未熟な少年に刺激を与えてくれた音楽として、「風」のファースト・アルバムから「あいつ」を、「今日の一曲」として紹介させていただいた。