今日の一曲:No.113:小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる「今日のわざ(富岡正男 作詞・作曲)」(アルバム「クリスマス」より)

「今日の一曲」シリーズの第113回です。

今回ご紹介する一曲も前回に続いて合唱曲ではあるのですが、今回は、前回のそれとは大分装いが違いまして…。何と申しますか、作品へよりも、どうしたってこれを演奏した者たちへと焦点を向けてしまう、そうした“代物”であるかと思います。

ところで、そうした“代物”を収録した盤のこれは、昨年のクリスマスに、いやその翌日か翌々日かに、私の命の恩人でもあるその人からクリスマスプレゼントとして? 突然に送られてきたものでして。で、恩人のその行為に感激して、早速この盤を聴いてみると、これがなんとも面白い! もちろん、今年のクリスマスこそ、この盤を聴きながら一時を過ごしました。

といった次第で、今回はそんな盤と一曲をご紹介しながら、これに絡めて諸々語らせていただきます。

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《何処の誰から?》

昨年(2020年)の年末だった。クリスマスの翌日か翌々日だったか、宅配便で1枚のCDが私の手元に届いた。

いや、初めからCDと分かっていたわけではない。どうもCDらしい、そういったものが割と確りとした封に梱包されて届いたのだ。

で、思わず

「しまった!」

と声を発した。

伝票の送り主欄に記載されているのは、CDショップを全国に展開するその会社名だけだった。私自身は心当たりがない。何処の誰が送りつけたものなのか、ちゃんと確かめずにこれを受け取り、封を開けてしまったのだった。

まぁ開けてしまったのだから、と恐る恐る中身を取り出してみると、が、中身のそれを見て少し安心した。ハァ~、と一つ息を漏らしながら呟いた気がする。

「たぶん、あの人だな」

と。

ま、直ぐに見当がついたというわけだ。私にとっての、命の恩人、Y氏に違いないのだった。

念のため、連絡を取って確かめたところ、やはりそうだった。

実はY氏、細かな手続きや作業のこうしたことは苦手な方のタイプの人で、この件もどうやら意図的はなかったようだ。いやぁでも、さすがだ。ハハハハ…。

 

ちなみに、命の恩人「Y氏」については、第96回(2019/06/09公開)で色々と語らせていただいたこともあって、今回はこのくらいにしておくけれども…。もう12~13年前になるだろうか、恐らく、当時、私なる者の近くにY氏が居なかったなら、私はいま現在こうして生きていなかっただろうと思う。Y氏とは、そうした人物だ。

 

《来年のクリスマスまで》

で、届いたその中身だよね。

封から取り出したそれはCDであったわけだけれど、先ずはCDの帯に書いてあるそれを見て、驚いてしまった。

そこには、…音楽史上に残る夢の顔合わせ、4人のスーパーセッションアルバム。小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる『クリスマス』…といった具合に書いてある。

元々は、1976年にLPレコード盤でリリースしたアルバムで、2009年に再販したのがこのCDであるらしいのだ。ジャケットを兼ねた付属の冊子には、当時の雑誌「フォーライフ」1976年秋号掲載のレコーディングレポートの内容がそのまま載っていて、1976年の8月に4人が箱根で約1週間を掛けてレコーディングした、そのときの様子が詳しく書いてある。

収録曲は、順に…

1.赤鼻のトナカイ(作詞・作曲:Johny Marks、訳:新田宣夫)、編曲・歌:泉谷しげる

2.お正月(作詞:東くめ、作曲:滝廉太郎)、編曲・歌:吉田拓郎

3.夏願望 作詞・作曲・編曲・歌:井上陽水

4.O HOLY NIGHT(作詞・作曲:A・Adam)、編曲・歌:小室等

5.街を片手に散歩する(作詞・作曲:泉谷しげる)、編曲・歌:吉田拓郎

6.クリスマス・ソング(作詞:田槇道子、作曲:小室等)、編曲・歌:小室等

7.冬を走る君 作詞・作曲・編曲・歌:泉谷しげる

8.WHITE CHRISTMAS(作詞・作曲:Irving Berlin)、編曲・歌:井上陽水

9.GREENSLEEVES(作者:不詳)、ギター、ほか演奏:小室等、石川鷹彦、他

10.BLOWIN' IN THE WIND(作詞・作曲:Bob Dylan)、編曲・歌:吉田拓郎

11.PA!PA!PA! 作詞・作曲・編曲・歌:泉谷しげる

 ~きよしこの夜(作詞・作曲:F・Gruber、訳:柚木康、賛美歌109番)、歌:泉谷しげる

12.諸人こぞりて(作詞:不詳、作曲:G・Haendel、賛美歌112番)、編曲・歌:吉田拓郎 

13.メリー・クリスマス 作詞・作曲・編曲・歌:井上陽水

14.今日のわざ(作詞・作曲:富岡正男)、歌:小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる 

 …の以上14曲(15曲?)だ。

 

これがリリースされた1976年、当時の私めは高校1年生だったんじゃぁないかな(?)。

学校で教わる勉強などというものには、まったく関心がなくてね。それどころこか、やること何もかもが半端でだらしない、そんな小僧だったのだよ。まぁ、高校生の割には精神が幼すぎたのだろうかな。だからって、そこからいま現在に至ってまで、どれほど成長したかは甚だ疑問でもあるけれど。あっ、そんなことはここではどうでもイイな。

ぃやぁこのようなアルバムがリリースされていたとはね、当時は全く知らなかった。

中学3年から高校1年のそのくらいだった頃は、クラシック音楽の類これの他では、洋楽のポップスやロック、バリー・マニロウやエルトン・ジョン、スティービー・ワンダー、あとは、クイーンやキッス、といったこのあたりの音楽を聴きあさっていたように想う。日本のミュージシャンやアーティストにあまり目を向けていなかった、それもあるかも知れない。

 

封から取り出したこのCDを、早速、聴いてみた。元々がLPレコード盤のアルバムなのだから、ここは、収録されているこの順序通りに聴くのが礼儀だろう、だなんて思ってね。ある種の愚直というか、そうして聴いた。

聴くと、いやぁイヤイヤ、楽しい! 面白い! もうこれだけだった。

「なんで、クリスマスを過ぎてから届くかなぁ~」

とちょっぴり愚痴っぽいことを呟いたかも。とは言え、楽しいし、心地好いのだった。

 

で、全部を通して一度聴き終えて、ふと思った。

二度三度と繰り返して聴きたいこの思いは、来年のクリスマスまで捕っておこう、とね。

そんなわけで、昨年の年末においては、アルバムの全体の印象だけを記憶に残してこれを留め置くことにしたのだった。

 

《ここに、そのままで》

といった次第で、2021年の、私めのクリスマス・イベントは、この「クリスマス」というCDアルバムを聴く、これになった。

当然、恒例の、ジョン・レノンのアルバムを聴いた後に、だ。

(*“ジョン・レノンのアルバム”というのは、ジョンとヨーコの「ハッピー・クリスマス~戦争は終わった~」が収録されたアルバムのこと。詳しくは、第104回(2019/12/09公開)で語らせていただきました。)

 

イベントは、2021年12月24日・25日に実施。場所は、私が暮らす、その我が住む部屋で(笑)。

 

えっ? さほど暇であったわけでもなく、ちゃんとこの為に時間を設けたのだよ。

ま、確かに、本来ならば、“クリスマス・ライヴ”なんぞを開催して、歌やらギターを奏でながらステージに立っている側でなくちゃいけないんだけどね。ぅん~でもね、今ひとつ、“コロナ”も落ち着いてないし…。なので、今年も独りで過ごすことに…。

 

で、24日と25日とに時間を作って、ジョン・レノンのアルバムを聴いた後、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるの4人によるアルバム「クリスマス」については、両日に渡って二度三度と繰り返し聴いた。

それにしても、これもまた、“ラクぅ~になれる”んだな。

前回に語った武満徹などの“音楽”や“うた”のこれらについても私は“ラクぅ~になれる”と言ったけれども、4人のアルバム「クリスマス」を聴いての“ラクぅ~になれる”は、また少し別の種のものに感じた。

前回で語ったのは、ずうっと我が身の外遙か遠くへ、あるいは、ずうっと我が身の内奥深くへ、といった何処か果てしないところへと誘われていきながら、自身の何処もそこも空っぽになる、その感覚を謂ったわけだけれど。が、今回のここで謂う“ラクぅ~になれる”は、「ここに居ていいよ」、「そのままで在っていいんだよ」といった感覚に近い。何処かへと誘われるのではなく、“ここに、そのままで”を許して貰えている感じなのだ。この少し別の種の“ラクぅ~になれる”が、アルバム「クリスマス」を聴いていてはとても心地好いのだった。

 

やっぱり、音楽って、面白い。

そして、不思議だ。

 

《あえて一曲を選ぶなら》

さて、その、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるの4人によるアルバム「クリスマス」を聴いていては、このアルバムに収録された全てを通して、これ丸ごと在ってこそ、楽しく、面白いのだけれど…。

が、「今日の一曲」シリーズとしては、“一曲”に絞って取り上げる、これをルールの一つにこれまでも進めてきたわけで…。ぅん~、困った。

ぃや、困ったのだけれど、これを取り上げる他ないだろうね。

 

アルバムの最後に収録されている、富岡正男作詞・作曲(合唱編曲)の「今日のわざ」。これを、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるの4人が、四重唱で聴かせてくれているのだ。しかも、無伴奏の合唱(ア・カペラ)で。

 

CDに付いてきた冊子のそのレコーディング・レポートによると、音域の高い方から、井上、泉谷、小室、吉田、といったこの順にそれぞれが各パートを担当しているようだ。但し、原曲よりも半音下のキーで歌っているとのこと。というのには、スタジオに入って1時間が経過しても各々ともにしっくりこないでいたらしく、それで、小室の提案でキーを半音下げることに。でも、これが上手い具合にハマったらしいのだ。ん? 上手い具合にハマって、ハモった、というわけだな。が、結局は、演奏時間1分20秒ほどのこの曲を、2時間半以上掛けて練習・録音したのだそうだ。

 

今日のわざ すべて終え

静かなる 夜となりぬ

やすらかに(父よ) すこやかに(母よ)

守らるる(つつがなく) この幸(いませや)

我がつとめ 明日もつくさん

真心もて 一すじに

父上よ(空とおく) 母上よ(微笑みて)

つつがなく(星一つ) いませや(光りぬ)

今日のわざ すべて終え

静かなる 夜に祈る

  

けれど、このレコーディング・レポートを読む以前に、CDから届く彼らの四重唱を聴いていては、こうした真剣さや熱心さというものが彼らの演奏の何処かにもう既に表れているのを感じていたように思うんだな。もちろん、富岡正男の「今日のわざ」という作品のこれ自体がもつエネルギーみたいなそれも一緒に在ってのことなのだろうけれど。個性的と言うよりかは、癖の強い、と言った方が好いだろうか、そんな癖の強い4人が、しかも無伴奏という謂わば丸裸に近い状態で、彼らそれぞれの声だけで歌い合って四重唱を奏でているこれが、4人の癖の強さをも超越してイイ感じのハーモニーを生み出しているのだから、そりゃぁちょっと感動するよね。

アルバムに収録された順に1曲目から聴いていっては、大体が、賑やかなクリスマス・パーティーといった風に盛り上がっていくわけで、が、最後、この「今日のわざ」で、グッと締まる、というのか、この曲を聴いていては私の場合であるなら、自身の内がすうっと落ち着いていって、ゆっくりと心が鎮まっていくのを感じられて、これがまたラクぅ~になれて心地好いのだよね。とは言え、「ここに居ていいよ」、「そのままで在っていいんだよ」といった感覚は、最後の曲のこれも含めてアルバムを通して変わらないってところが、謂ったら、更に凄くて、面白い! なるほど、このアルバムの最後に在るべき、曲、うた、だと思わせてくれるんだな。

 

《2021年のクリスマスは》

ってなことで、2020年の年末に届いたY氏からの贈り物は、2021年のクリスマスを迎えて、当に、素敵なクリスマス・プレゼントとなって私のもとへと届いた、というわけなんだな。

ま、クリスマスというと、これまでの「今日の一曲」でも語らせてもらった通り、どちらかと謂うと、やや苦い、やや重い、そんな記憶の方が勝ってしまっている私ではあるのだけれど…宗教的な云々では決してなく、日本の風習的なところの面と我が極々プライベートな出来事とが混ざってのその記憶によるもの…、が、2021年のクリスマスは、独りで居ながらも、お陰さまで、好い一時を過ごすことができた。

やや苦い、やや重い、これらの記憶も、少し和らげて軽くしてくれたように思う。

ぅん、ホント、有り難い。

届いたそのCDアルバム「クリスマス」と、ここに収められた一曲一曲に、感謝だ。

やや妙なタイミングで届きはしたけれど、このCDアルバムを届けてくれたY氏に、感謝だ。

 

「今日の一曲」シリーズの第113回、今回は、小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるの4人によるアルバム「クリスマス」より、富岡正男作詞・作曲「今日のわざ」を取り上げて、諸々語らせていただいた。

 

今回もまた、いつも通りの長文・悪文で、たいへん恐縮です。

読者の皆様には、これにお付き合いいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

おっと、これを書いているうちに、2021年も大晦日。

大晦日となれば、私としては、ベートーヴェンの第九、これを聴きながら一年を締めくくるしかないわけでして。

皆様、どうか、よい年をお迎えください。

 

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コメント: 2
  • #1

    紫微垣 (木曜日, 13 7月 2023 08:40)

    1976年ラジオチャリティーミュージックソンのCMあけに数十秒流れた曲で、よく聞く聖歌隊のコーラスとは異なり、何故かずっと耳に残り気になっていたものが46年半の時を経て判明し感動感激!!!ありがとうございました。

  • #2

    愛間純人 (土曜日, 15 7月 2023 12:35)

    >紫微垣 様
    コメントをお寄せいただき恐れ入ります。
    “46年半の時を経て判明し…”とは、これもまた恐れ入ります。
    私めの長文悪文ブログも、少しは役に立つことがあるみたいで…。書き続けてみるものですね。こちらこそ感謝です。コメント、ありがとうございました。