今日の一曲 No.119:バッハ作曲「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」(中田恵子・アルバム「Joy of Bach」より)

久しぶり過ぎるほど久しぶりの、「今日の一曲」シリーズです。

第119回となる今回は、クラシック音楽ファンならずともお聴きになったことのある人は恐らく多くいらっしゃるであろうこの曲を、2025年の最初の一曲としてご紹介させてもらいます。またいつものように私事の諸々も含めて色々と語らせてもらいます。

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《2025年を迎えての心境?》

私がバッハを聴くとき、というのは、どうやら、胸裡で起きている何かしらを落ち着けたい、然もなくば、脳みそ内で右往左往しているあれやこれやを一度空っぽにしたいとき、みたいだ。幾らかばかりか自身を静観して眺めたいときかも知れない。

 

2025年1月5日(日)のこと。

が、これよりも少しだけ時を戻すと、このところのブログにも記した通り、2024年12月のライヴ・ツアーから自宅に戻った私は体調を崩して・・・感染症の類ではなく、また風邪っぽい症状もなく、ただただ微熱と身体が怠い状態が続く・・・、その12月中旬頃から晦日まではほぼ寝込んだ状態で、大晦日から正月三箇日に掛けても寝床からは出たもののスッキリとはせず、自宅で休養を摂った。

いつもの感じにもどったかなぁ、という感覚にようやくなったのがこの日。

とは言え、この日の朝は?いや、寝床の側に置いた時計の針は間もなく11時を指そうかという位置にあった頃に、やっとこさで床を脱出したのだった。

 

もう正午前といった時刻。起床後、諸々整えたところで音楽を聴きたくなった。

で、部屋のレコードラックとCDラックが並ぶそこを暫くじっと眺めるのは、いつもの通り、お決まりの動作だ。が、2025年新年を迎えては初だ。

 

ふと頭に浮かんできたのは、バッハ・・・。

「うん、そうだな、バッハにしよう」

と独り言をもしかしたら声にして呟いたかも。

それからは少しの間、ラックの方向へと伸びた手先・指先がうろうろと彷徨い始めるわけで、まぁでも、これもまたお決まりの動作だ。無伴奏チェロ?それとも無伴奏ヴァイオリンの曲?室内アンサンブルの曲?吹奏楽にアレンジされたもの?・・・といった具合に。

 

そして、2025年最初に我が指先がラックから取り出した盤は、オルガニスト・中田恵子のアルバムだった。

 

《オルガン曲の記憶》

洋服職人の叔父の影響で3~4歳の幼少の頃からクラシック音楽などを聴いていたのに、そして中学生くらいからは自分でレコード盤を買いに行くようにもなっていたのに、何故か、オルガン(ソロ)の曲の盤はずうっと持っていなかった。40歳少し手前の、それくらいの歳になるまで買ったことがなかったのじゃぁないのかな。

 

少々頼りない記憶ではあるけれど、小学生低学年くらいのときには既にバッハの作品も幾つかは聴いて知っていたように想う。そのなかにはオルガンの曲も自然と含まれていたように想う。

 

明確な記憶として在るのは、学校のお勉強が大嫌いで苦手だった私をどうにかギリギリで合格・入学させてくれた高校での、入学して間もなくの、音楽の授業で聴いたバッハの「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」だ。50分間を音楽鑑賞だけで終わるといった授業のこのときが、オルガン曲を聴いたと言える、最も過去に遡れる明確な記憶だ。

 

あっ、思い出したよ。

このときの音楽の授業で聴いた「トッカータとフーガ ・・・」に当時の高校生なりたての私はとても感動したのだった。いやぁ、何だかとても好い演奏に感じたのだ。こんなにも好い曲だったっけ?と少し衝撃的な感覚もあったほどで。それで・・・詳細には憶えていないけれど・・・、そのとても感動したあれこれを提出用紙の紙面いっぱいに書き込んだのだ。

ちなみに、私、「音楽」は年間通して期末テストすべてで100点(満点)。他の科目はどれも赤点すれすれの点数だったのにね。エヘヘ・・・。

 

《オルガン怖い》

恐らく、だけれど、バッハの作品は幼い頃から聴いていたのはほぼ確かで、大方どの作品も好みの方だったように想う。ただ、記憶の僅かに在るこれを辿っていくと、オルガンで演奏されたもの、これに対してだけは、何と言うべきか、怖さみたいなもの、こういったものが常にあった気がするのだ。幼かった頃ほど。

年齢を重ねるとともに、怖さみたいなもの、のこれは徐々に薄まっていったように想うけれど、が、その一部は長く何十年も残り続けていたのかも。それで自分自身からは、オルガン曲の盤を手にしよう、とまではなかなかならなかったのかも知れない。

 

怖さみたいなもの、これは何をきっかけに私の内へと入り込んできたのだろうか。

オルガン=パイプオルガンの印象として私が幼い頃から長く(10代半ば頃まで)イメージしていたものは、その多くは教会(キリスト教の)に在って、それも割と大きな教会の建物内に在って、その教会の中(建物の中)は、周囲には様々な図柄で彩られたステンドグラスが張り巡らされていて、教会内に入ってくる光は昼間も然程明るくもなく、静かで落ち着いた雰囲気ではあるけれど、冷たく薄暗い場所でもあって、少し視線の先を変えると十字架を背負った人の彫刻もあったりして、こうしたものと一緒に据え付けられている楽器、なのだと。少しばかり不気味にも感じて、何か怖い、そういった所に在るものとしてイメージされていたように想う。加えて、ここから放たれる音の迫力や壮大さにも圧倒されていたのではないのかなぁ。

きっと、畏れ多さ、とか、厳粛さ、といったものがまだ分からずに、これを感覚だけで捉えていた幼い頃のイメージが、怖さみたいなもの、として私の内深くにその後も長く居続けていたのだろう。

何らか宗教的要素を含む音楽のここには、畏れ多さ、とか、厳粛さ、のこれは必ず在って、またこれらは必然的でもあるように思うのだけれど、殊、パイプオルガンが据え付けられているそこは、多くの場合、如何にも宗教上のそれを象徴するような場所でもあるから、他の楽器で演奏されるものよりも、パイプオルガンから奏でられる音楽に、怖さみたいなもの、をより一層強く感じていたのかも知れない。・・・現在に至っての私が自身を振り替えつつ想像してみてのことだけどね。

 

《中田恵子「Joy of Bach」》

ってな次第で、「今日の一曲」シリーズ第119回の今回は、バッハ作曲「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」を、オルガニスト・中田恵子のアルバム「Joy of Bach」からご紹介させてもらう。

 

中田恵子のアルバム「Joy of Bach」には、バッハの作品のなかでも比較的ポピュラーなものが集められていて・・・「小フーガ ト短調 BWV578」、「目覚めよと呼ぶ声あり BWV645」など、全9曲が収録されている。オルガン演奏を聴く、ということにおいても、熱烈なクラシック音楽ファンとまではならずとも音楽を聴くことが好きな人であればそれぞれに愉しむことのできるアルバムかと、個人的には思う。

録音は、2016年9月、フランスのベルフォールに在るサン・ジャン教会で、教会に据え付けられたマルク・ガルニエ1984年製作のオルガンを使用して、収録がされている。・・・パイプオルガンの演奏を録音するのって色々とたいへんそう。

 

《スッキリ感、ダンスミュージックのように》

で、このアルバムに収められたオルガニスト・中田恵子が演奏するバッハ作曲「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」なのだが・・・私が知る範囲のことでしかないのだけれど・・・、これを聴くより以前、その過去に私が聴いたものとは明らかに違いがあって。

ぅん~何だろうねぇ、上手く言い表せない(喩えられない)のだけれど、極端な言い方をすると、ジャズィな、というか、ポップな、というか、これら類の、ダンスミュージック、のようにも感じられて。

 

畏れ多さや厳粛さのこれは楽曲自体がもっているエネルギーみたいなもののなかに確かに在ると感じはするのだけれど、併せて、勢い、スピード感、切れ味、といったものに、時に力強さや重厚さも加わって、目の前でダンサーが軽やかに且つ力強くステップを踏みつつも、時に跳躍を繰り返したり、あるいは身体全体を小さく縮めてみせたり、また身体全体の筋肉を力強く動かしながら大きく伸ばしていったりと、躍動感に溢れ活き活きと踊る姿・動作がイメージされるのだよ。世代によっては理解不能に陥るかもだけれど、80年代にヒットした映画「フラッシュダンス」の有名なダンスシーンとも一寸だけイメージが重なったりもしてね。一言で謂えば、「このトッカータとフーガ、踊っているよ」という感じだ。

・・・いやいや、いずれにしても、私にはこんな具合に聞こえてくる、私はこんな具合に聴いている、といったレベルの話に過ぎないのだけれど。

兎にも角にも、これまで聴いた他の演奏のものとは少し違ったふうに感じる「トッカータとフーガ・・・」で、極々簡単に謂えば、聴いた後に、スッキリ感のこれを感じ得る、ところだろうか。

 

変かな?

変かもな。

 

が、病み上がりの新年、少し元気が出てきた!

2025年、探求していきたいこと、行動してみたいこと、様々に色々とまだまだある。

ま、でも、先ずは体調を整えてからだね。

・・・といったことを、オルガニスト・中田恵子が演奏するバッハの「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」を聴きながら思った次第で、これが2025年1月5日(日)のことだ。

 

ってなことで、2025年1月19日(日)現在においては、すっかり体調も回復して、毎日、ボイストレーニングなんぞもして、中高生たちの家庭教師みたいなこと(子どもたちが自立した学びができるようにサポートしていく)も続けている。

 

「今日の一曲」シリーズの第119回、今回は2025年最初の一曲として、オルガニスト・中田恵子のアルバム「Joy of Bach」よりヨハン・セバスチャン・バッハ作曲「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」を取り上げて諸々語らせてもらった。

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いつも通りの長文、また悪文の数々、お許しいただきたく存じます。

尚、ちゃんとした?新年を迎えての私めの心境や抱負などは前回のブログをお読みいただきたく、恐縮ながらお願い申し上げます。